2019年5月28日(火)放送の『名医と繋がる!たけしの家庭の医学』。
「『人の名前が出てこない…』は”脳出血”のサイン?早期発見&改善法!」というテーマで放送されました。
教えてくれるのは、大阪府吹田市にある『国立循環器病研究センター 脳神経内科部長』の猪原匡史先生。
脳卒中や認知症などの脳の病を撲滅すべく奮闘を続ける、日本を代表する脳の名医です。
「これまでは脳出血と言うと、強い症状が出て初めて診断されるという風なものが脳出血だったんですけども」
「最近分かってきたのはMRIの進歩にもよりますけども、無症状であってもそういう小さな脳出血をお持ちの方がおられるということが分かってきたわけです」
放送内容をまとめましたのでぜひ参考にしてみてください。
脳出血とは
あなたは普段の会話の中で「なかなか人の名前が出てこない」という経験はありませんか?
実はそんな方の中に、近い将来大変な事態を招く可能性を秘めた人がいることが、最近の研究で分かってきたんだとか。
それは…脳の血管が破れる『脳出血』。
そんな脳出血に関して、4年前ある衝撃的な新事実が発表されました。
なんの症状もなく普通に生活している人の脳内で、すでに脳出血が起きているとは一体どういうことなのでしょうか…?
脳の画像に写る小さな黒い点…これこそが猪原先生の言う『小さな脳出血』の痕。
こうしたごく小さな出血が健康な人の脳内で日常的に起きており、それが大出血の前触れとなっていることが判明。
早期発見することで命に関わる脳出血を防げる可能性があるというのです。
そう、「人の名前や言葉がなかなか出てこない」という人の脳の中では、すでにこうした小さな出血が起きている恐れがあるということなんです。
『小さな脳出血』をチェック!1分間言葉思い出しテスト
猪原先生によると、小さな脳出血が起きているかどうかは1分間の簡単なテストで推測することができるといいます。
そのテストとは『1分間言葉思い出しテスト』。
「50音のある一文字から始まる言葉を1分間に何個言えるか?」を見るテストです。
例えば『あ』というお題なら、雨・赤い・歩く・アリ・朝日・汗といった具合に名詞でも動詞でも何でも構わないので、できるだけたくさん言ってください。
①人名や地名など固有名詞はNG
②「雨」と「飴」など読み方が同じ言葉や「雨」と「雨音」など同じ単語が重複する言葉はNG
→言ってしまった場合はどちらか1つだけカウントする
実はこのテスト、実際の医療研究の現場でも行われているれっきとした医学テストなんだとか。
このテストの成績が悪い人に、小さな脳出血が発見されやすいことが分かっているんだそうです。
基準値は『1分間に10個以上』答えられるかどうか。
番組では、健康診断などで特に問題はないという健康な60代以上の男女15名の人たちに対してテストを実施。
小さな脳出血を引き起こしている可能性がある人がいるか調査しました。
すると…15名中7名が基準値の10個に届かず、『小さな脳出血のリスクあり』という結果に。
参加した15名の人たちの脳内を特殊なMRIで調べたところ、テストに合格した8名には『小さな脳出血』は見つかりませんでした。
しかし不合格だった7名には、なんと5名もの方に『小さな脳出血』の痕が!
中には『小さな脳出血』が合計で5ヶ所も発見された人も…
ただ「この段階で早期発見されたということは、大きな脳出血を防げるチャンスがあるということなので安心してください」とのことでした。
では『小さな脳出血』と『言葉がなかなか出てこない』ということに、一体どういう関係があるのでしょうか?
「この『小さな脳出血』というのは、脳の比較的深い部分の『基底核』という場所に起こりやすいんですけども」
「そこに微小な出血が起こりますと、言語を次から次へと紡ぎだすようなそういう機能にも障害が起こる」
実はこの部分にある血管は非常にもろく、小さな脳出血を起こしやすいと言われているんだとか。
そのため、ひとたび出血すると周りの神経の情報伝達がスムーズにいかなくなって、人の名前や言葉がなかなか出てこないという症状が出る可能性があるというのです。
あなたは大丈夫ですか?
『小さな脳出血』が引き起こすリスクとは
猪原先生が小さな脳出血の原因や予防法について詳しく教えてくれました。
「MRIなど技術が進歩しまして、小さな脳出血が起こっていることがここ10年ぐらいで分かってきました」
「小さな脳出血が1つでもあると、大きな脳出血を将来起こすリスクが10倍。さらに認知症のリスクも2倍程度になると言われていますので注意が必要です」
・大きな脳出血のリスク→10倍
・認知症のリスク→2倍
「(小さな脳出血が)自然に消えるということはまずないですね」
「大きな出血の警告と捉えて早期発見して、大きな脳出血を防ぐように努めるということが大事になってきます」
「そのために必要なのは、小さな脳出血が起きる原因を知るということなんですね」
「脳出血の原因というと高血圧ということが中心だったんですけども、小さな脳出血というのは血圧以外の原因があるというのが分かってきた」
「それを防ぐことができれば将来の大きな脳出血も防ぐことができると、そういうことになります」
脳出血の原因『悪玉虫歯菌』
脳の中の毛細血管、その内壁は血管内皮細胞という細胞で覆われています。
血管を守る内皮細胞がはがれると、そこに『ある生き物』がくっつくことが分かってきたんだとか。
この生き物こそ小さな脳出血を引き起こす真犯人。
今回番組の検査で小さな脳出血が見つかった5名にある検査をしたところ、全員の体の一部からその生き物の痕跡が見つかったとのこと。
その生き物の正体は…『虫歯菌』。
この5名の人たちには、虫歯もしくは過去に虫歯を治療した跡が共通して見られました。
口の中で繁殖し歯を溶かす虫歯菌が小さな脳出血をも引き起こし、ひいては命に関わる大出血のリスクを高めてしまうというのです。
「口腔内の虫歯菌、その中でも特に『悪玉虫歯菌』が細い血管にくっついて、それを最終的に破壊してしまうということが分かってきました」
猪原先生の研究などで分かってきたのが、虫歯菌の中でも特に血管にくっつきやすく小さな脳出血を引き起こす性質のある『悪玉虫歯菌』とでもいうべき菌の存在。
通常であれば免疫細胞が処理するのですが、数が多すぎると対処しきれずそのまま全身を循環しやがて脳の毛細血管にまで到達。
すると、動脈硬化などではがれた血管の壁に付着、血管を構成するタンパク質を徐々に溶かし、やがて小さな穴を開け出血を引き起こす可能性があるということが分かってきたんだそう。
しかもこの悪玉虫歯菌、今現在虫歯がなくても一度でも虫歯になったことがある人なら、口の中で繁殖している可能性があるんだとか。
ここで1つ疑問が…
今回の番組の検査の結果、小さな脳出血があった5名だけでなく出血がなかった10名も過去に虫歯を経験していたことが分かりました。
同じ虫歯経験者なのに、なぜ出血が起きる人と起きない人がいるのか。
猪原先生が教える『悪玉虫歯菌』Q&A
「虫歯菌というのは一回住み着いてしまうと、残念ながらゼロにするのはできないんですね」
「生まれつき持っている方というのはおられないですね。すべて他人から感染したもので、主に感染源はご両親が最も多いですね。口移しで食べ物を与えたりして、それで感染してしまう」
「大人になってからキスをしても多分ほとんど移らないですね。というのは口の中の細菌の分布というのは3歳までにだいたい決まると言われていますので。3歳以降だといくら菌が入ってきても定着せずに死んでしまうんですね」
「悪玉虫歯菌があったとしても、数が少なく抑えていれば仮に血液の中に入っても免疫細胞の力でやっつけてくれるんですね」
「なので大事なのは数を増やさないようにするということで、そのためには歯磨きというのは非常に重要なんですね」
小さな脳出血を起こすか起こさないか分けるポイント
ところが、歯みがきをしていても悪玉虫歯菌が増えてしまう人がいるんだとか。
「すべての人の身体にはもともと虫歯菌を殺す働きが備わっているんですね」
「培地の上で増やした虫歯菌に人の身体から分泌される『ある成分』を加えてみます。すると虫歯菌がいなくなりました。もともと人はみな虫歯菌を殺す成分を身体から分泌しているんです」
「実はこの成分を含んでいるのは唾液なんです。唾液に含まれる『ラクトフェリン』と呼ばれる殺菌成分が、この悪玉を含めた虫歯菌の増殖を抑えてくれるんですね」
悪玉虫歯菌を増やさないようにするポイントは『唾液をしっかり出すこと』。
今回、小さな脳出血があった人となかった人の唾液の量を比較してみることに。
1分間ガーゼを口に含んでいただき、染み込んだ唾液の量を測る検査を行った結果…
・脳出血なし…平均3.95g
・脳出血あり…平均1.2g
小さな脳出血がなかった人は平均4g近く分泌できていたのに対し、あった人はそのわずか3分の1の1.2g。
実は唾液の分泌量も加齢とともに減ってきます。
夜中のどが渇いて目が覚めたり食べ物が飲み込みづらいという人は要注意。
自覚はなくても唾液が不足している可能性が。
唾液を増やす『口ストレッチ』
ではどうすればいいのでしょうか?
そこで今回、小さな脳出血が見つかった方に唾液アップ法を伝授。
脳出血予防に挑戦していただくことに。
協力していただいたのは、特殊なMRI検査で計5つもの小さな脳出血が見つかった加藤明子さん(仮名・72歳)。
そんな加藤さんの唾液の分泌量は…
小さな脳出血があった5名中、特に少ないたったの0.5g。
では悪玉を含む可能性のある虫歯菌の数はどれくらいなのか検査してみると…
健康な人の場合は唾液1ml中10万個以下というのが基準値なんですが、加藤さんの場合はなんと!10倍の100万個以上という結果に。
でもご心配なく!
そんな加藤さんの脳出血予防が期待できる唾液アップ法があるんです。
それが、唾液を増やして悪玉虫歯菌を撃退する『口ストレッチ』。
実はこれ、実際の医療現場でも使われている方法なんだとか。
唾液不足の患者さんに唾液の分泌を促す治療法なんです。
その方法を開発した、日本大学歯学部教授の植田耕一郎先生によると。
「大きな唾液腺として『耳下腺』だとか『顎下腺』だとか『舌下線』がありますから、それぞれの辺りの所をほど良い刺激を与えてるということにはなるのかなと思います」
唾液は舌、耳、そして顎の下側にある3ヶ所の唾液腺から分泌されます。
そこを3種類の動きで刺激することで、常時唾液の分泌量を良くするというのがこの『口ストレッチ』。
動きは全部で3種類。
【口ストレッチのやり方】
①唇をウーとすぼめ約5秒キープ
②イーと横に伸ばして約5秒キープ
これを1セットとして5回繰り返す
①口を大きく膨らませ約5秒キープ
②思いきりしぼませて約5秒キープ
これを1セットとして5回繰り返す
①大きく突き出し左右上下とゆっくり動かす
これを1セットとして5回繰り返す
検証期間は1週間。
口ストレッチによって、小さな脳出血の原因である虫歯菌はどれくらい減少するのでしょうか。
テレビを見ながら、お皿を洗いながらコツコツと口ストレッチを続けた加藤さん。
「3人の孫娘たちの結婚式に出て、どうしても晴れ姿を見たい」そんな思いが加藤さんを突き動かしていたんです。
そして1週間後…
どちらも大幅に改善していました!
加藤さんの未来に明るい光が差し込みました。
この結果を脳の名医である猪原先生に伝えると…
「非常に興味深い現象だと思います」
「それだけ短時間で虫歯菌の減少につながったというのは、非常に効果があるんじゃないかと思います」
「ただ継続がおそらく大事で。脳出血のリスクを下げるという意味では、それを継続される事が非常に重要なんじゃないですかね」
おわりに
名医も認めた、唾液を増やし脳出血を予防する『口ストレッチ』。
皆さんもぜひ試してみてくださいね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。