コンビニで働いていると本当にいろいろなタイプのお客さんが買い物にやってきます。
小学校低学年の子どもから杖をついたお年寄りまで。
そんなお客さんの一人に毎日のように缶ビールを買いに来られる女性のお客さんがいました。
今回はそのお客さんについて書いてみようと思います。
毎日複数本の缶ビールを購入
その女性のお客さんの歳は見た目で60代半ばくらい、時間帯を問わずほぼ毎日買い物にきてくれる常連のお客さんでした。
そして買うのは決まって缶ビール、それも500mlの大缶を何本も…
僕はビールはほとんど飲めない方なので「毎日よくこんなに飲めるなぁ」と、最初は単純に驚く程度の印象でした。
そのお客さんはとても気さくな性格の人で、他の時間帯の店員ともよく親しく世間話をしていたのを覚えています。
「もうアルコールは止める!」
あるとき、そのお客さんと親しい店員のおばさんがこんなことを言いました。
「あのお客さん、もうビール飲むの止めるんだってよ」。
毎日缶ビールを複数本飲むとか体にいいわけありませんもんね。
それからそのお客さんは、買い物にやってきてもノンアルコールビールしか買わないようになりました。
それから1ヶ月ぐらい経ったでしょうか。
そのお客さん、なぜかまたビールを買うようになったんです。
たまに夜中に来店しなかった日は朝からやってきて買っていったりと。
とも思っていましたが、相手がお客さんという立場である以上は店員が勝手に売らないようにできるはずもありません。
ある朝、自宅のトイレで…
そしてしばらく経ったある寒い冬の日、朝のシフトに勤務しているおばちゃんから聞きました。
「あのビール買いに来るお客さんが、朝に自宅のトイレの中で座ったまま亡くなっていた」ということを。
学校から帰ってきた高校生の娘さんが発見して救急車を呼んだそうですが、もう手遅れだったそうです。
詳しい病名までは聞けませんでしたが、アルコールが原因だったのは間違いないとのこと。
そこの家庭はそのお客さんと娘さんとの二人家族だったようで、娘さんはまだ高校生なのにたった一人の肉親を失ってしまったんです。
僕がそのお客さんと会ったのは、亡くなる数日前の朝方にパンを買いに来られたのが最後でした。
そのときは、まさか数日後に突然亡くなってしまうなんて思ってもいませんでした。
今でも少し後悔しています。
何かできることがあったんじゃないか、お店全体で話し合って強引にでもそのお客さんにはビールを売らないようにしたらよかったのではないか。
もちろん現実的には物を売るコンビニという立場でそんなことは不可能ですし、仮にやったとしても他のお店で買われるようになるだけの話です。
もしかしたら病院でアルコールを止められていたりしたのかもしれませんが、今となってはそれも知るよしもありません。
ただ思い出すんです、その一人残されてしまった娘さんは今どうしているのだろう?と。
自分の人生どう生きようと、どういう最期を迎えようとその人の勝手と言えばそうなのかもしれません。
でも残された家族にとって、これほど辛いことはないと思うんです。
結婚して子どもがいる方、ご両親がまだ健在の方、自分の健康にだけは気を使ってくださいね。
自分のためだけでなく、愛する家族のためにも…
おわりに
ちなみに後から知ったことですが、そのお客さん実はまだ50代前半だったんです。
アルコール中毒というものの恐ろしさを改めて感じた出来事になりました。
ここまで読んでいただきありがとうございました。